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【連載】プログラミングで子どもたちの未来をあと押し:第5回

第5回 大学入学共通テスト「情報Ⅰ」 プログラミング問題(第3問)の分析

東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。

この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!

今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。

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「情報Ⅰ」 第3問 問1の解説

今回は、大学入学共通テスト「情報Ⅰ」の第3問で出題されたプログラミング問題について分析していきます。

問題は、「工芸部が文化祭に出品する複数の工芸品作成のために製作担当者を割り当てるアルゴリズムを、大学入試センターが開発した独自のプログラミング表記で記述する」ものでした。

問1は、アルゴリズムを考える前提条件

①製作する工芸品は9つ

②9つそれぞれの工芸品の製作日数は一定(表1)

③一つの工芸品は一人で担当し完了する

④部員は3名

そして最も重要な割り当てルールである

⑤「最も早く空きになる部員(複数いる場合はそのうち最小の番号の部員)が、空きになった日付から次の工芸品を担当する」

を提示して、図1をもとに工芸品4の担当者(ア)とその期間(◯日目~◯日目)(イ)、図2の工芸品5の担当者(ウ)とその期間(◯日目~◯日目)(エ)、(オ)を回答させる問題でした。

前回の連載でもお伝えしましたが、問1はプログラミングについての知識が全くなくても満点(8点)が取れる問題です。筆者は小学校6年生でも十分に回答できるものだと思いました。何故なら(ア)と(イ)は、問題に示されている「図1 割当図(工芸品4まで)」を見れば、(ア)は2(部員2)であり、(イ)は1であることが容易に理解できるからです。工芸品5については図1にアルゴリズムの前提条件となる④を当てはめれば、最も早く空きになるのは部員2であることが明らかですので、(ウ)は2(部員2)で、その製作日数は「表1 各工芸品の製作日数」で3日間と示されていますから、(エ)は3、(オ)は5であることがこれも容易に理解できるのです…。

「情報Ⅰ」 第3問 問2の解説

問2はいよいよ問1で示した前提をもとに、割り当てのアルゴリズムを大学入試センターが開発した独自表記でプログラム表記する問題です。

問題文には、割り当て担当者であるKさんが「最も早く空きになる部員の番号を求めるために、各部員が空きになる日付を管理する配列Akibiを用意」した、とあります。そして「この配列の添字(1から始まる)は部員の番号であり、要素はその部員が空きになる日付」だと書かれています。 問1の状況下で「この配列Akibiは図3のようになる」と説明して、まずは図3における添字3の要素を(カ)として問うているのです。

この小問では、大学入試センターが開発した独自のプログラミング表記における配列、ここではAkibiの添字と要素の対応関係を答えるのですが、この問いも「配列は値(変数)を入れておくための箱が複数くっついたもの」というプログラミングにおける知識がなくても、問1の(ア)〜(オ)同様、問題文と図3をしっかりと対応させて考えれば(カ)は4であることが当然に回答できるものです。

果たしてこの配列の考え方の理解をもとに、K さんは「配列Akibiの要素と、部員数が代入された変数buinsuを用いて」次に割り当てる工芸品の担当部員を表示するプログラムを作成するのです。

そしてそのプログラムは、次(図4)のように表記されていました。

次回は上記図4からこのプログラムが(07)行で、「次の工芸品の担当部員」を表示するので、配列Akibiの要素が最小となる要素番号、つまりは添字の番号を求めるプログラムであることを解説します。そして受験生に求められるプログラミングの「コーディングの基本処理とコマンド(命令語)」を確認して、このプログラムをIchigoJam BASICで置き換え、実際の実行環境で試すことのメリットについて順次解説していきますのでご期待ください。

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松田(まつだ)(たかし)さん

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長

東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。