第4回 大学入学共通テストに新教科「情報Ⅰ」初登場!

東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。
学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。
この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!
今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。
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大学入学共通テスト
2025(令和7)年1月18日(土)・19日(日)に、大学入学共通テストが実施されました。今回の共通テストは昨年度までの内容から大幅に変更され、新教科「情報Ⅰ」を含む7教科21科目へと再編されました。
本連載では、前回に引き続き「IchigoJamBASICにおける命令行からプログラム行への移行・展開」と「筆者が考案したカリキュラムの全体概要」についてお話しする予定でした。しかし、連載の趣旨である「プログラミングで子供たちの未来をあと押し !!」を踏まえ、大学入学共通テストで初めて実施された教科「情報Ⅰ」(第3問)のプログラミング問題に焦点を当て、求められる知識や技能について話をすることが適切だと考えました。この内容は、小学校段階におけるテキストプログラミングの重要性や、私が提案するカリキュラムの理解にもつながると考えています。
まずは新教科「情報Ⅰ」の実施状況と結果を概観し、その後に第3問、プログラミング問題の小問について考察していきます。
「情報Ⅰ」の実施状況と結果

「情報Ⅰ」の配点は100点満点で、第3問(プログラミング問題)の配点は25点でした。第3問は問1〜問3で構成され、小問ア〜シの12問が含まれています。配点は問1が8点、問2が7点、問3が10点です。(以下、表参照)
大学入試では、1点、2点の差が合否を左右することもあります。そのため、新教科「情報Ⅰ」における第3問の正答率が他の設問(第1問、2問、4問)と比べて正答率がどの程度だったか検証する必要があります。さらに、問1~3の各小問の正答率を分析し、次年度以降の対策を検討することも重要です。

2025年2月6日、大学入試センターは「令和7年度大学入学共通テスト 実施結果の概要」を発表しました。共通テストの受験者約46万人のうち、「情報Ⅰ」を受験したのは約27万人でした。平均得点は69.26点で、一部外国語(中国語・韓国語)と既卒者向けの「旧情報」を除けば、全科目中で最高点でした。
「情報Ⅰ」の平均点が高かった理由
この原稿執筆時点で、各教科における設問毎の正答率は公表されていませんので、ここでは「情報Ⅰ」の平均点が、他教科と比べて最高点となった理由を考えてみます。
筆者はひとえに「初年度の実施で、受験者や共通テストで「情報Ⅰ」の得点を加点(加味)する大学等に配慮した」問題が出題された結果だと考えました。特に第3問(プログラミング問題)は、大学入試センターが過去に公表したサンプル問題(令和3年度)や試作問題(令和4年度)の問題と比較した時、非常に易しく、特に問1で問われた5つの設問は、プログラミングについての知識が全くなくても満点(8点)が取れる問題でした。筆者の考えでは、小学校6年生でも十分に回答可能なレベルだったと言えます。
問2、問3には合わせて7つの小問がありますが、このうち4問は問題文をしっかりと読み込めば、プログラミングの知識がなくても正答できます。したがって、受験者は25点中14点を比較的容易に獲得でき、残り11点の問題をどう解くかがポイントとなります。

「情報Ⅰ」への今後の対策
今回の結果を踏まえて、「情報Ⅰ」は易しいから、特別な対策は不要だと考えるのは早計です。
次年度以降、特にプログラミング問題の難易度がどのようになるかは予想できませんが、難易度が上がれば当然プログラミングについての理解が今年度以上に求められますし、今年度と同様であったとしても課題として指摘した11点が配当された設問のような問いに的確に答えられる準備は不可欠です。プログラミング問題を短時間で正確に回答できれば、他の大問にじっくり取り組むことができますし、総合得点の向上につながります。
筆者は、小学校段階からIchigoJam BASICのテキストプログラミング体験を重ねることで、プログラミング特有の構文やコマンド(命令語)に対する抵抗感や違和感を減らし、受験準備の負担を軽減できると考えています。
次回は、第3問の問1~問3を大学入試センター独自のプログラム表記とIchigoJamBASICを対比などすることで詳しく分析し、プログラミング問題に対処するための基本的な処理や受験において重要となるコマンド(命令語)を明らかにしていきます。
松田孝さん
合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長
東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。