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【連載】プログラミングで子どもたちの未来をあと押し:第2回

第2回 小学校段階におけるプログラミング言語の再考

東京都の小学校教諭、教育委員会指導主事、小学校校長などを歴任されてきた松田孝さん。
学校現場をはなれた今も、自ら会社をつくり、自治体や民間企業と連携してプログラミング教育の普及に取り組まれています。
この連載では、これまでプログラミングの授業を実践してきた松田孝さんが見てきた「プログラミング教育によって変わる子どもたちの姿」や、元校長だから分かる「学校が抱える課題とその解決策」「大学入学共通テスト『情報Ⅰ』の最新情報」など、役立つ情報が満載!
今からプログラミングの授業をはじめたい先生方やプログラミング教育に関心がある保護者の方、必読です。

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IchigoJam BASIC(イチゴジャムベーシック)との出会い

私が「IchigoJam BASIC」というプログラミング言語を初めて知ったのは、2016年12月に福井県福井市で開催された「こどもプログラミング・サミット」というイベントでした。そこで福野泰介氏が開発したシングルボードコンピュータ、IchigoJamに出会ったのです。

このIchigoJamというコンピュータが、BASIC言語を改良したIchigoJam BASICというテキストプログラミング言語で動くのです。しかしこの時は、この言語を小学校のプログラミング授業で積極的に採用しよう、とは思いませんでした。なぜならキーボードを使ったテキスト入力を小学校に導入するハードルの高さを感じていたからです。

ビジュアル言語を採用する必然とその再考

GIGAスクール構想が発表される3年も前のこの時期に、当時私が勤務していた東京都小金井市立前原小学校でも、何とか一人一台のコンピュータが準備できた状況で、子どもたちがタイピングしてプログラムを入力することなど、その困難さは容易に想像できました。何しろその時は、彼らのタイピング力は、国の調査(2015年)*1で「1分間のキータイピング入力の平均速度がわずか5.9文字」(5年生)だったのです。そんな状況でしたので、プログラミング教育必修化を受けて侃侃諤諤、喧々轟々の議論を交わしながらも、小学校現場がビジュアル言語を採用するに至ったのは、ある意味必然だったのです。

私自身もプログラミング授業の導入にあたっては、ブロックタイプのScrach(スクラッチ)MakeCode(メイクコード)、もっと感覚的に操作のできる Viscuit(ビスケット)等の言語を使って実践を試行錯誤していったのです。そして現在、全国の自治体で作成されるプログラミング教育のカリキュラムモデルは、そのほとんどがいくつかのビジュアル言語を子どもたちの発達段階に即して採用しているのです。

はたして、2023年に民間が行ったタイピング調査*2では、5年生の結果を見ると「1分あたり62文字の入力ができる」ようになっており、GIGAスクール構想の顕著な成果が現れています。さらに前回もお話しましたが、2025年1月に実施される大学入学共通テストでの「情報」におけるプログラミング問題への対処を考えれば、小学校段階でのプログラミング授業で採用する言語を再考すべき時が、今ここにきていることを実感します。

なぜ、テキスト言語なのか !!

現行の学習指導要領では、3年生から英語活動が始まり、国語でローマ字も学びます。IchigoJam BASICのコーディングに必要なコマンドはどれも簡単なもので、子どもたちはそのコマンドを入力することはもちろんのこと、コマンドの意味を理解しながらコンピュータとのコミュニケーションを図っていくことができるのです。

テキスト言語は、コンピュータが直接理解できる機械語に比べ、ハードウェアの制約に依存しない人間にとって分かりやすい、プログラミング言語と言われていますが、それでもビジュアルブロックに比べれば、0と1、二進法の制約をもってプログラムをしなければなりません。しかしこの制約こそが、子どもたちにテキスト言語を介してコンピュータの計算の仕方を理解させ、コンピュータが表現する0と1の世界観を体感させるのです。そしてSociety5.0から6.0へと爆速に激変する、新しい社会を築く科学(コンピュータ・サイエンス)への誘いとなるのです。

次回は、私が考えるIchigoJam BASICを使ったプログラミングの導入授業の実際とその背景にあるカリキュラムの系統性についてもお話ししたいと思います。ご期待ください。

*1 文部科学省が実施した情報活用能力調査
*2 株式会社教育ネットと株式会社ミラボが実施した『第4回全国統一タイピングスキル調査』

松田(まつだ)(たかし)さん

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO
小金井市立前原小学校・元校長

東京学芸大学教育学部卒業。上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、指導室長をはじめ、東京都の小学校校長を3校歴任。2019 年3月に辞職、4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。総務省地域情報化アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員としてICTで教育に革命を起こすべく日々奔走。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』『IchigoJamでできるプログラミングの授業』(くもん出版)がある。

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